若い頃のユーラシア大陸バス旅行の思い出を綴った「深夜特急」などの一連の作品から
沢木耕太郎氏というと世界中を股にかけているノンフィクション作家というイメージが強いけれども
このエッセイ集「旅のつばくろ」はおもに国内各地を旅した話が中心で
今まで遠い存在だった沢木氏が少し身近に感じられる一冊だ。
30代から40代にかけて僕は旅行会社で添乗員をしていて、国内のあちらこちらをウロウロしていた時期がある(海外旅行の添乗はやらせてもらえなかった)。
「旅のつばくろ」を読むと自分が訪れたことのある土地と沢木氏の旅行先がけっこう重なっていて
もしかしたら沢木氏も自分と同じ風景を見ていたかもしれないなー、などと思ってしまう。
行った先は同じなんだけど沢木氏の場合は土地の人とのふれあいがあったりで、とても豊かな旅をしていると感じさせられる。
いっぽうで自分の場合は仕事に追われるだけの慌ただしい旅で、あまり深くその土地を味わうことができなかったのが残念だ。
本書を読んでかつて訪れた場所にもう一度足を運んでみたくなった。あの頃とはまた違う景色が見えてくるかもしれない。
「深夜特急」のようなスケールの大きさはないかもしれないけれど、手元に置いて気が向いたときに一編ずつ読みたくなる、そんなこじんまりとした愛すべき本だ。
そういえばコロナが広まってから長旅なんかさっぱり行ってないなー‥‥