昨夜はバイトの最終日だった。
シフトを上がったのはAM2時。この時間になるともうほかに開いてる店はどこにもなく、寄り道もできずにまっすぐ帰宅するのがいつものパターンだった。
退職が決まる少し前のことだが、単調な毎日に嫌気がさし、バイトのあとに軽く深夜の街をドライブしようかと思いついたことがあった。
2、3時間も走れば、明るくなるころにはどこかの海辺にでもたどり着くだろう。車内でひと眠りしてから水平線にのぼる朝日を眺めようという青春ドラマみたいな企画だ。
いずれ実行に移そうと思っているうちにバイトをやめることが決まってしまったので、最後の日に企画を実行しようと決意。行き先も2時間ちょっとで行けそうな茨城の大洗海岸を選んだ。
シフトを終え店を出たのが午前2時半。寝静まった通りを走り国道6号線を北上、水戸方面をめざす。
深夜でしかも連休谷間のせいか道もすいている。コロナの自粛ムードで遊びに出る車も少ないようだ。
運転しながらカーステレオで米国のロック歌手ブルース・スプリングスティーンの曲をかける。
彼の曲は夜の街をイメージさせるものが多い。「ドライブ・オールナイト」というタイトルのナンバーもあり、まさに今夜はそんな感じだ。
昔からわけもなく夜中に車で走るクセがあり、静まり返った道をひとり走っているといろんな思い出がよみがえってきたりする。少し大げさかもしれないが自分の人生を見つめ直すひとときだ。
昨夜も走りながら、この1年あまりのバイトの日々や、今まで転々としたさまざまな仕事、今度の新しい仕事のことなどをつらつらと考え、ガラにもなくおセンチな気分になる。
長距離トラックと競うように国道6号線をひた走り、店を出発して1時間半。時刻は4時をまわり空が明るくなっていく。
これはとても大洗までたどり着けそうにないと思い、水戸の手前まで来たのでこのへんで引き返すことにした。
小便もたまり、温かいものも飲みたいのでコンビニに入る。よりによって自分が働いてたファミリーマートだ（笑）。
ドアをくぐると初めて入る店なのにすっかりおなじみの風景だ。かかってるBGMまで同じ。
レジにいた店員さんにホットカフェラテを頼む。けっこう年がいってる感じの男性で、自分が着てたのと同じ制服を着てる。
ジイさんといってもいい年頃だ。茨城のこのあたりはあまり若い人が応募してこないのだろうか。夜勤はキツくないのだろうか。
ジイさんは僕から千円札を受け取り、おぼつかない手つきでお釣りを返してくる。
もしも今までどおりコンビニでバイトを続けていたら、将来は俺もこのジイさんのようになってしまうのだろうか。そんなことを考えながらコーヒーマシンで熱いラテを淹れた。
駐車場の車のなかでラテを飲み、バイト先からもらってきた賞味期限切れのサンドイッチにかじりつく。そこから折り返し、朝6時半には家に戻ってきた。
新しい１日の始まりだ。無駄に水戸あたりまで往復した気もするが、なんとなく自分の気持ちに踏ん切りがついた。
