お客からぼくに対するクレームが店に届いた。
レジの前に立っていたがひと言も声をかけられることもなく無視されたというのだ。
防犯カメラの録画をチェックする。たしかにレジには僕がいてカウンターをはさんでお客が斜め前に立っているのだが、画像でわかると思うがレジの斜め前に立たれると什器やその上に乗ってるポップでほとんど姿が隠れてしまうのだ。
クレームの主は小柄な女性だったのでよけい目につきにくかったのだろう。悪意があって無視したわけではない。たまたま気づかなかったのだ。
だが店長は僕の言いぶんなんか聞く耳持たない。全面的にこっちが悪いことにされ、僕が事情を説明すると自分に刃向かうと思ったのか突然逆ギレし始めた。
自分が使っている人間を守ろうとしないというのは、申しわけないが経営者として失格だ。高校生のバイトが相手なら自分の立場を利用して一方的にマウンティングできるだろうが、こっちはれっきとした社会人だからね。ちゃんと相手の話を聞くのがマナーというものだろう。
で、今月いっぱいで店をやめることにした。
ま、表面的にはクレームに負けた形かもしれないが、正直やめることが決まってホッとしたのも事実だ。
もともとコロナで昼間の仕事が減って、やむをえず始めたバイトだ。一生この店で働き続けるつもりはさらさらない。
いつも気持ちのどこかに、いつまでこんな不本意な仕事を続けているのだろうという思いがあった。
このままズルズルと働き続けていたら、あとになってきっと激しく後悔するにちがいないだろう。しかし理由もなしにやめることもできない。
今回の一件でやめる理由ができて助かったくらいだ。
今夜と明日、あさっての晩の3連チャンをクリアすればこの店ともおさらば。G W明けからは別の仕事が待っている。今度は昼間の仕事なので体調も元に戻るだろう。やっぱり収入よりは健康だ。
ところで自分が抜けたあとのシフトの穴は、募集をかけても人が集まらなかったのか、そっくり店長が入ることになったらしい。
週に4日の夜勤、そのうち2日は朝まで8時間の勤務だ。ま、ワンオペの苦労をちょっとは味わってもらおうか。