日常ゴーゴー!

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シン・エヴァ取り急ぎの感想(ネタばれほとんどなし)。

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遅ればせながら「シン・エヴァンゲリオン劇場版」をやっと観てきました。

 

僕はいわゆるエヴァオタクでも何でもなく、本作品の公開が発表されるまでエヴァ・シリーズはまったく未体験の人間でした。

 

公開に合わせテレビで放映された劇場版3部作「序・破・Q」を見ただけという程度のレベル。

 

「序」における物語の設定には非常に興味を惹かれました。ただ「破」「Q」と進むにつれ、だんだん登場人物どうしの葛藤がメインになってしまい、そっちの方はそれほど心を動かされなかった。自宅だとつい「ながら見」になってしまうので物語に集中できなかったせいもあったかもしれない。

 

なのでシリーズの最後を締めくくるという本作品については観ようかどうしようかかなりの迷いがあった。もし理解できなかったらという心配もあったし。いわゆるエヴァの研究本というのもちょっとばかり目を通したが、これも古い本なのでテレビ版の解説のみで映画版については触れてないようだし。

 

というわけでけっこう迷ったすえの遅い鑑賞になってしまいました。

 

とりあえずここに取り急ぎで本作の感想を書きますが、まだ観てない方々のために言っておくと、内容についてたぶんほとんどネタばれはないと思います。なぜならネタを割ることができるほどストーリーについて理解できたとは思わないから(笑)

 

あまり理解できなかったのにも関わらず感想を書こうとするのは、それだけ作品に感銘を受けるところがあったわけで。

 

結論から先に言えば、とてもよかった。話が把握できなくてもそれなりに十分楽しめました。

 

理由のひとつは映像のすごさでしょう。これだけは自宅の小さなテレビ画面を断然超えている。ストップモーションにしてシーンのひとつひとつをじっくり眺めていたくなるほどだ。もちろん音響面だって家より優れているし。

 

戦闘シーンの細部にまでわたるメカニカルな描写はもちろん、自然に囲まれた昭和な雰囲気の漂う村(このくらいのネタばれはセーフでしょう)の風景も素晴らしい。こんな村なら自分も住んでみたくなる。田植えとかチャレンジしてもいい。

 

このくだり、もしかしたら庵野秀明監督が自分の生まれ育った時代の風景を描こうとしたのではないだろうか。

 

おそらくエヴァ世代にとって、ここに描かれた風景はそれほど馴染みのないものでしょう。庵野氏は自分や自分と同世代の観客(僕もその一人)に向けてこのエピソードを用意したように思えてしかたない。

 

昔を懐かしむノスタルジーというのは、わりと禁じられているようなところがある。

 

僕自身も昔はよかったと考えているタイプの人間ではなく、懐かしさとその作品の優劣とは別に考えるようにしている。昔の作品のほうが何でもかんでも今より優れているとは思ってない。

 

なので作品にふれるときは慎重にノスタルジーを排除するようにしてきた。

 

でも、シン・エヴァのこの村の描きかたは、ちょっとぐらいノスタルジーを肯定してもいいかなと思えてくる。

 

当たり前かもしれないが新しいものが全て優れているというわけでもない。新しいものを選択するとき、同時にそれまであった何かを失うわけで、失われたものが実はかけがえのない大切なものだったかもしれない。

 

古いものの良さも新しいものの良さも分けへだてなく享受できることが文化の豊かさだろう。シン・エヴァにはもちろん最先端のメカ描写も満載で、ノスタルジックな村の描写と両方の魅力が堪能できる。

 

この作品、庵野秀明監督がみずからのエヴァに決着をつけた作品と言われていて、たしかに庵野氏の精神史をたどるような部分もある。この人について僕はそれほど詳しいわけじゃないけど、最後の方の碇ゲンドウの告白はそのまま庵野氏の内面の吐露ではないかと思える。

 

僕より少し上の年齢にあたる庵野氏が、文化の受け手として送り手として苦闘を重ねてきた半生に、思わず自分自身を重ねたりしてしまう。

 

これまでの自分の人生で本を読んだり映画を見たりすることはかなりなウェイトを占めてきた。もしかしたら現実の生活よりもそれらのエンタメ(文化)のほうがより自分の人生そのものになっているかもしれない。

 

それらの文化やエンタメが自分にとってどんな意味があったのだろう。もっと実人生を大事にしてきたほうがよかったのではないかという思いにここ最近とらわれることも多かったのだけど、この作品を観て「それでよかったのだ」と背中を押されたような気になった。

 

本や映画といった文化(エンタメ)を捨てずにきて、よかった。これからも自分はそれらを享受し続けていくだろう。実人生になんのプラスもなかったとしても。そんなふうに思いを新たにさせてもらった「シン・エヴァンゲリオン」でした。