田舎のコンビニでバイトしてるせいか、この季節になると店の中にしょっちゅう虫が入りこんでくる。
とくに夜勤のときは照明に誘われてやってくる虫の対処に追われることになる。
小さい羽アリみたいのは無限に集まってきて、掃除しても掃除しても死骸がたまる。業務用のでかい掃除機で一気に吸い込んで片づける。
コガネムシとかカナブンなどの甲虫系も珍しくない。オケラが床をつるつる滑りながら這いまわってるのも見たし、立派な鎌を持った大ぶりなメスカマキリもいた。カマキリのかぶり物をつけた香川照之かと思った(うそ)。
カブトムシやクワガタといったスター級の虫も迷い込んでくる。そういうのは店長が捕獲して、昼間お店に来る子どもたちにプレゼントしているらしい。子どもは喜ぶし店の売り上げにもつながるし、いい作戦だ。考えたな、店長。
ま、たいていの虫は嫌われもので、店内に迷い込んできたばかりにティッシュでつまみ取られたり、ひどいときには靴で踏みつぶされる。
最近の若いバイトの子たちは虫がこわくてさわれないらしい。虫を発見すると泣きそうな顔で「取ってください!」と、こんなときばかり頼ってくる。
僕らの頃とちがって、子どものときに虫採りとかした経験があまりないのかも。香川照之が聞いたら嘆くだろう。
こないだの深夜、店の自動ドアが開いたとたんにヂヂヂヂ‥‥と鳴きながら1匹のセミが飛び込んできた。
たまたま店内にいた若い女性客は悲鳴を上げ、セミは狂ったように鳴きながら天井に何度も体当たりを繰り返していたが、やがてぽとりと落ちてきた。
こともあろうにレジカウンターに置かれた、小銭の受け皿の上に。
そのまま動かなくなってしまった。とんだ営業妨害だが、どうやらかなり弱っていて力尽きる寸前らしい。
受け皿を手に表へ出て、駐車場の隅の雑草の上に放してやったが、こんな場所ではそう長くもたないだろう。
8月も後半になると、夜勤を終えて早朝店から出てくると、そんなセミの亡きがらがアスファルトの上にゴロゴロ転がっている。夏の終わりを感じさせる風物詩だ。