またしても幼い命が犠牲になってしまった。
児童虐待というやつも簡単にはなくならないようだ。
今回の事件がこれまでとちょっと違うのは、親と子どものあいだに第三者が介入し、間接的に子どもを死なせたのはその第三者の、ママ友だったという点だ。
つまりこれはもう虐待死などというものではなくて立派な殺人だ。ママ友が主犯で子どもの母親が実行犯。法的にどう位置づけられるか分からないがそんな風に自分は解釈してしまう。
いったいどんな経過をたどり母親は精神的に支配されてしまったのか、言われるままにわが子を死に追いやってしまったのか、今後のくわしい事件の解明が待たれる。
それにしても、幼い子どもが犠牲になる前に、この母親本人なりあるいは周囲なりが、喰いものにされ、カネを巻き上げられていることに気づけなかった点が不思議というか、残念だ。
カネを騙し取られていたという点ではこの母親もまた被害者で、何とも救いのない事件だ。これまでの虐待死とは異質の、もっと人間の心の深淵を覗きこんだような気分にさせられる。
ふつうの虐待死事件では、子どもを死なせた親の側にしても「しつけのため」とか「ちょっと殴ったら打ちどころが悪くて」みたいに言い逃がれできる余地がある(いや、ほんとは言い逃がれなんかきかないけど)。
それに引き換え今回の事件は明確な殺意を感じさせる。殺すつもりはなかったと母親とママ友は主張するだろうが、食べものを与えなければ死んでしまうぐらいのことは普通、わかるはずだ。
そしてその動機となっているのは金だ。金欲しさのために善意を装い相手をマインドコントロールする。こんなに後味の悪い事件は自分としては初めてだ。
しかもこの事件の背景には、いま社会が抱えるさまざまな問題が見え隠れする。シングルマザーの貧困、相談できる他者が身近にいない孤立、カネがすべての拝金主義‥‥。
事件の詳細が明らかになるにつれ、それら現代が抱える諸問題にも光が当てられるに違いない。
そんな世の中を動かしているのはこの僕たちだ。もしかしたらあの子が死んだのは僕たち一人一人にも責任があるかもしれないと気づき、愕然とするかもしれない。
ほんとに、自分の住んでる地元だったら取材したいぐらいの事件だ‥‥。