日常ゴーゴー!

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映画「ラストマイル」感想。

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いったん終了宣言をしてしまいましたが……

他ブログに書いた文章を転載して、もう少しだけ引っ張らせていただきます。

先日観た映画「ラストマイル」の感想です。

「この作品は国内のエンターテインメント史的に重要な作品になるのではないか」

 とある批評家の方がそんな発言をされていました。
 その言葉の意味するところを考えながら、いつものように予備知識ほとんど入れず劇場に臨みました。

 巨大物流センターのビジュアルにまず圧倒されます。
 アマ●ンや宅●便をモデルにしているのは明らかですが、誰もが日常的にお世話になっているそれら物流の裏側を支えるシステムや業界構造の一端に触れ、驚きの連続です。

 無差別テロというテーマはややヘビィですが、そこは満島ひかり演じる主人公の軽いキャラでバランスをとり、けしてシリアスになり過ぎずゲーム感覚の強いエンタメに仕上がっています。

 ですがそこに描かれている問題はけして軽くはなく、一流企業の上層部から下請け会社の中間管理職、派遣や契約労働者にいたるまで、それぞれの立場の人々にささるポイントに満ちています。

 俯瞰撮影の多さでも分かるようにこの作品は僕たちがいま暮らしている現実を「神の視点」からとらえています。
 そこから見えてくるのは、実に自分たち一人一人のささやかな欲望が集まって、この社会を動かしているのだなという事実です。

 鑑賞後の印象としては、けしてめでたしめでたしという気分にはなりきれない部分が残りました。優れたエンタメに必須のカタルシスはやや欠いているかと。

 それはけしてこの作品の欠点ではなく、作品が提示した諸問題が、事件が終結しても根本的には何も解決していないからではとも思いました。

 その答えは「他人ごと」ではなく「自分ごと」として考えていくべきなのでしょう。

 発達したデジタルやネットが無限に、巧妙に僕らの欲望を刺激し続けるこの時代をどう生きていくべきか、自分の態度を問いかけられる作品でした。