きのう4月1日は映画が割引で観られるサービスデーだった。
前々からこの日は「ノマドランド」を観に行こうと決めていたが、週の真ん中の夜勤二連チャンと重なってしまった。
午後一番の回を観るつもりでいたが、朝方まで働いていたため半日寝てしまい、ようやく目が覚めたのは夕方。なので夜勤入る前に夜からの回を観に行った。
「ノマドランド」は家を失った車上生活者たちの物語と聞いていたので、さぞかし陰惨な映画だろうと思ってたら真反対で、むしろ癒やし系の作品だった。
何よりフランシス・マクドーマンド演じる主人公の高齢女性がポジティブで前向きだ。住むところを追い出され仕方なくというより、むしろ積極的に大型のヴァンで住みなれた町をはなれていく。
驚いたのは一人前のノマド?になるための訓練所があること。ベテランノマドの指導のもと、放浪生活の心得やハウツーを学ぶのだ。
アメリカには昔からヒッピー文化の伝統があり、人里離れたコミューンで共同生活を送ったりしている。僕が見た感じではノマド訓練所もその流れにあり、自給自足のDIY精神に満ちている。主人公をはじめノマド仲間たちは一人として悲壮感がなく、根無し草のような暮らしをそれなりに楽しんでいる。
この映画に登場するノマドたちは主人公を含め、みな人生の終盤にさしかかった人たちだ。不思議と若者は出てこない。むしろノマドな生き方って、そういう社会の第一線を退いた人たちにこそふさわしい気がする。若い世代はまだまだ現実を生きるのに精いっぱいなのだ。
彼の国では年をとり仕事をリタイアすると、それまでの家を処分したりして大型のキャンピングカーを買い、全米を放浪してまわる人が多いそうだ。だからもう、このノマドスタイルは今に始まったことじゃないんですね。
ちなみに向こうではキャンピングカーのことをモーターホームと呼ぶらしい。車ではなくエンジンとタイヤのついた家。これなら車上生活などと誰にも言えないだろう。発想の逆転だ。
映画を観ながら、ひとつの場所に縛られることのない自由気ままな人生を夢想してみる。その気になれば意外と難しいことではないだろう。
あなたの人生を変えるかもしれない、特別な作品。それが「ノマドランド」のキャッチコピーだ。たしかにこれからの自分の生き方について真剣に考えてみたくなる映画だった。
観終わってそのまま夜勤に入り、朝まで働く。
変わりばえのしないマンネリな仕事に追われながら、やはりあの映画みたいな生き方はできないわなと心がしぼむ。
夜が明け、また新しい1日。
今日はバイトも休みだ。ほんの1日だけの放浪の旅に出てみようか‥‥。