昨日の深夜から1時間15分のドラマスペシャル「こもりびと」の再放送があった。
中高年の引きこもりを年老いた親が面倒見る、いわゆる8050問題を描いたもので、引きこもり男性を松山ケンイチ、その父親を武田鉄矢が演じる。
このドラマ、もしかしたら今後も再放送されるかもしれない。この先ネタバレ含むので楽しみにしている方は読まないことをおすすめします。
松山演じる引きこもり男性は30歳の時から10年間ほとんど部屋から出ずに暮らしている。その父親(武田鉄矢)にガンで余命半年の宣告がくだる。
父親は自分がガンであることを姪っ子の娘の協力を得てなんとかわが息子に伝えようとするのがドラマの発端だ。
息子は一流大学を出たが就職できず、非正規でファミレスの店長を続けていた(非正規で店長っていうのもすごい)。ま、人間関係とか働くことへの疑問とかいろいろあったのだろう。
父親は昔ながらの価値観の持ち主で働こうとしない息子をしばしば叱責し、それがますます息子を追い込む形となっている。残念ながら就職氷河期世代の息子と昭和ガンバリズムの父親とでは価値観が違うのだ。
ガンと診断された父親は自分が亡きあと何とか息子が自立できるよう姪っ子の力を借りて行動を開始するのだが‥‥。
主要な登場人物を父と息子、それに姪っ子の3人にしぼったのがドラマとして成功している。
普通はさまざまなキャラクターを登場させて脇のエピソードを膨らませたりするけど、このドラマは3人の関係性に焦点をしぼってじっくり掘り下げている。
またこの限定された人間関係というのは、引きこもり当事者とその家族が悩みを他者に相談できず、孤立を深めていくさまを暗に表現しているようでもある。
ま、ドラマの中の父親は役所や保健所など公的機関に相談しているのだが、そこでも39歳を越えると支援を受けられないとか精神障害者の認定がないと駄目とか厳しい現実がある。
2人を助けようとする姪っ子の娘は就活中。そこではセクハラを受けたりさまざまな苦難が待ち受けている。
それを見ると社会のレールに乗っていくのも、引きこもりと同じくらい苦しくて大変なことなんだと思ってしまう。
おそらく引きこもっている人たちというのは、社会に出て働いてる人たちにすごい引け目を感じていて、その劣等感ゆえになおさら出られなくなっているのかもしれないけど、
社会に出ている人たちだって、バリバリかっこよく仕事しているわけじゃない、だからそんなに引け目を感じなくてもいいのだというドラマの裏にあるメッセージを感じた。
僕も引きこもりではないが20代後半は失職してしまい悶々としていた時期があった。
当時は働いていない人間に対する風当たりは今より激しかったように思う。正社員志向も根強かった。いまは就職氷河期の影響とかコロナ失業でけしてめずらしいことではなくなったけど。
またネットやSNSを介してそういう人たちの声が届けられ、自分からも発信できて以前ほど孤立はしていないのではないかと。
ま、順調に社会生活を送っているようでも実情は引きこもりの人たちと同じくらい苦しかったり辛かったりということはあると思う。
だからけして社会に出て働くばかりがいいことではないのだという認識を持ちたい。
自分も仕事についたりやめたりを繰り返して、ずっと引きこもりすれすれの人生を送ってきたので、某有名AV監督の言葉をまねて「苦しいときには下を見ろ、オレがいる!」と言いたい。