僕の住む市の中心部にある商店会さんが、このたび地域活性のためにフリーペーパーの発行を始め、それを僕が書かせていただいている地域情報紙で取り上げることになった。
記事を書くにあたりまずフリーペーパーの現物を入手しようと、市の中心部まで久しぶりに車で出かけた。自宅からおよそ20分、途中は広い田畑が続くだけのほとんど何もない一帯だ。
免許のない中高生のころは電車にふた駅乗って遊びに行ったもんだが、そのうち遊びも仕事も都内中心になり、地元からはだんだん足が遠のいていった。
ふだんの移動がもっぱら車なのも、あまり足が向かなくなった理由のひとつ。市の中心部は車を駐める場所が少なく、自然と行きづらい場所となってしまったのだ。
今回、久しぶりに中高生のころよく通った市立図書館やバーガーショップなどを目にし、懐かしい気持ちになった。
以前の景色が残っているところもあればずいぶん印象が変わってしまったところもある。いや、そっちの方が圧倒的に多いだろう。
むかしあった小さな商店はほとんど姿を消してしまい、かろうじて残っていてもシャッターを降ろしていたりで、商売をやめたり、空き店舗になってしまったようだ。
だいいち道を歩いている人が少ない。時刻は夕方、学校帰りの若者とかが集団で街をうろついてても不思議ではないのに、目抜き通りは閑散としていて街全体が静まりかえっているようだった。
そんななか、フリーペーパーで紹介されているという中古レコード・CD店に行ってみる。掲載店ならフリーペーパーも置かれてるだろうとあたりをつけたのだ。
この店には10代のころにはよく通っていた。もう30年以上れきしのある店で、今も店内には貴重なアナログ盤がぎっしりと並び、CDは隅の方で小さくなっている。流れるBGMは昭和の頃の歌謡曲やニューミュージック。
棚から1、2枚CDを選んでレジへ。カウンターの隅には目的のフリーペーパーを発見。思ったとおりだ。
会計を終えた僕ははじめてそのフリーペーパーに気づいたように(ほんとはそっちのほうが目的だったのだが)、
「これ一部、いただいていっていいですか」と聞くと、昔からいる店の主人は「どうぞどうぞ」と顔をほころばせ、自分のお店が紹介されたページを広げながら
「このページの隅のQRコードを読み取るとスマホで店の紹介動画が見られるんだよ」と嬉しそうに説明してくれた。
地元で何十年も営業を続けているこんなお店が、これからも残っていけるよう、今回商店会が始めたフリーペーパー発行の試みはぜひ成果をあげてほしい。そのためには自分もいい記事を書いて協力しよう。
久しぶりにやる気が湧いてくるのを感じながら買ったCDを片手に夕暮れが迫る街に出た。