日常ゴーゴー!

取るに足らない日常の記録にただただ徹するブログ。

若者と年寄りのあいだ。

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仕事のある日は朝、会社の近くの吉野家で軽く食事してから出勤する。いまの職に就いたときからの習慣でもう3年目だ。よく飽きないな、オレ。

(よろしければこちらの投稿も→「吉野家の朝。」 https://nanasee.hatenadiary.jp/entry/2022/04/29/061007

店に入るのはその日の出勤時間によって変わるが、だいたい5時から6時ぐらい。少し早めに着いて食事のあとネットを見たりして過ごす。

この時間、店内にはだいたい二、三人、いかにも出勤前という雰囲気のお客たちが「あー、これから仕事かー」みたいな、どことなく浮かない顔で黙々と朝定食などを食べている。よく確かめたことはないが顔ぶれもだいたい固定しているようだ。

だが、日曜や祝日の朝だけはちょっと様子がちがう。これから行楽に出かけるらしい人たちのグループが、出発前に腹ごしらえしていくのか次から次へと訪れる。

そういう人たちはどことなく浮き浮きとした雰囲気でかわす言葉もテンションが高くて、店の中はにぎやかな空気ににつつまれる。

さて、こないだの日曜の朝、出勤前にいつものように吉野家に立ち寄りいつもと同じ納豆定食を食べていたら、あとから二十歳前後の若者グループが入ってきた。人数は4、5名、よくは見なかったが男女比は半々というところだ。

これから遊びに行くとこなのかそれとも前の晩オールで遊んできた帰りか、ワイワイ談笑しながら店内を見まわし、空いてる席を探している。

たまたまグループ全員が座れるようなテーブル席が、僕のすぐ目の前しかあいていなかった。グループの中の女の子の一人が「えー、ここしかあいてないよ〜」とちょっと残念そうに声をあげる。気のせいか、すぐ前に座ってる僕の方をチラチラうかがっているようだ。

せっかく仲間うちで盛り上がっているのに、目と鼻の先でうす汚い労働者(僕のことです)が、陰気な表情で納豆定食をむさぼり食っていたら雰囲気ブチこわしだろう。

さっと空気を読んで定食の残りをかきこみ、そそくさと席を立って店を出た。きっと彼らはそのあと、楽しいひとときを過ごせたろう。

まあオヤジのひがみはこのくらいにしといて、昔ハマっていたビリヤードを最近また始めた(唐突に話題が変わってすいません)。

近所に●●レジャーセンターという、ゲーセンとカラオケとミニ四駆のコースと、その他もろもろを一緒くたにしたような娯楽施設があって、そこにビリヤード台もあるというので、とある夜ふけの12時過ぎ、初めて足を運んでみた。

すると何ということでしょう、真夜中過ぎだというのに若い人たちがおおぜい詰めかけているではないですか。カレシに連れられてきてるのか、夜遅いにも関わらず女の子の姿も多く、楽しそうにクレーンゲームなどで盛り上がっている。

自分の住んでる関東の郊外は少子高齢化が進み、昔にくらべ若い人の姿が激減した。繁華街でもないので若者が集団でワイワイガヤガヤしてる光景なんかほとんどお目にかからない。

コロナが流行ってからずいぶんお店が閉店したり営業時間を短縮してしまい、夜7〜8時ぐらいで街は深夜のゴーストタウンみたいに灯が消えてしまう。

そんなふうなので最近の若者は夜遊びせず、家でスマホやゲームばっかやってるのかと思ってたらこんなとこにいたんですね。知らぬ間に自分が彼らの行動エリアからずいぶんはずれてしまったのを感じる。

どうやら彼らと高齢者のあいだではしっかり棲み分けができていて自分が属してるのは後者のほうらしい。

そのフェンスを乗り越えて彼らの側に行こうとしても逆に向こうからは敬遠されてしまうだろう。牛丼屋で若者グループが自分のとなりに近づかないことでもそれは理解できる。まあこの年ならそれも当然だろう。

自分は若い頃とぜんぜん変わってないつもりなのに、いつのまにか高齢者カテゴリに入れられつつあるようだ。

若者にとって年寄りはいるだけでも煙たい存在なのだ。そこを認識せずにムリして若者サイドに加わろうとしてもミジメな結果に終わるだけだろう。

老兵はただ去り行くのみ。

若いヤツらはマッカーサーの言葉も知らないだろうな。マッカーサーも知らんかも。それでぜんぜんオッケーだけど。

 

 

作家の記念館めぐり。

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関東が大雪になるのではと予報が出た金曜日、

静岡県湯河原まで車を引取りに向かう。

早朝埼玉を出発するころはたしかに不安な天候だったが、電車で横浜を過ぎるあたりから徐々に回復、雲の隙間から日差しがこぼれ始めた。

鈍行列車で3時間かけて湯河原到着。駅前はちょっと前の温泉街の空気を残していて、立派な駅ビルが建ってしまった熱海よりも情緒が感じられる(写真)。

湯河原へんは車ではよく通るけど、いつも真鶴道路とか海沿いばかりで駅前はほとんど来たことがなかった。古い喫茶店やお土産屋さんが並び、のんびり散策したくなる町だった。

でも今日は仕事優先で渋々と客のところへ向かうバスに乗る。ほんと残念。

湯河原は以前添乗員をしていた頃にみかん狩りのツアーなどでよく来ていたのでバスの窓からの風景がなんとなく懐かしい。もう15年近く前なのでだいぶ変わってはいるのだろうけど。

バスはどんどん山あいへと入っていく。ぼんやりと窓の外を見ていると「西村京太郎記念館」と看板の出た建物がちらりとかすめた。

西村京太郎って、あの作家の…?

建物ははるか後方になってしまったが、急いでスマホで調べてみる。

西村先生に関する資料がたくさん展示されていて、館内の写真を見ると巨大な鉄道模型ジオラマもあるらしい。さすが鉄道ミステリーの第一人者!

つい先ごろ惜しくも亡くなられてしまった西村先生、生前この地にゆかりがあったのだろうか。

行ってみたい、ぜひこの目で大スケールの鉄道ジオラマを見てみたい!

お客のところから記念館まで車で10分ほどだ。車を引き取ったらその足で寄ってみよう。

ふだん風光明媚な土地まで来ても、次の仕事があるので観光どころか車を停めて食事すらめったにできず、常に追いまくられている。

今日はスケジュールに余裕があるので30分ぐらいなら見学可能だろう。

と気分が盛り上がったところで、検索で出てきた情報をもう一度じっくり見てみると「西村京太郎 閉館」というワードが。

コロナの影響により1、2年前から休館しているが現在も再開の目処は立っていないらしい。

うーん、これにはがっかり。

たしかに帰りにもう一度記念館の前を通ると駐車スペースにはチェーンが張られていた。いやー、ぬか喜びさせられたー。

まあ、こんなもんでしょう。グーグルのナビで見つけたスポットが実際に行ったらとっくに営業終了してたとか、よくあることです。

代わりにといってはなんですが、湯河原から湘南方面へ海沿いのコースをとって茅ヶ崎にある開高健記念館に立ち寄った。

国道134号からサザンの歌にもあるラチエン通りへ入ると、左手の小高くなった場所に記念館がら見える。もともと開高氏が暮らしていたお宅を改造したもので生前執筆に使われていた書斎なども見学できる。

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ここまで書いてもしやと思いチェックしてみると、最初にここに来たときのブログがしっかり残ってました。たぶん同じアングルで写真も撮ってる。https://nanasee.hatenadiary.jp/entry/2022/08/13/195958

なので以下略。マンネリで同じことばかり書いててすみません。

今回は2度目の来館ということもあり奮発して1000円の図録も買った。運営がきびしくて閉館とかしてほしくないからねー(笑)。

というわけで働いてるのか遊んでるのかよくわからない仕事です。

(記念館めぐりと言いつつ一ヶ所しか入ってないのでタイトルに偽りありだな)

 

 

 

 

 

 

 

電ドラ導入。

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月が替わり3月になった。

あちこちで梅や桜がちらほら咲き始めている。といってもまだまだ風が冷たい日も多いけど。

季節の変わり目、何か新しいことにトライしてみたい。

というわけでもないが、またまたドラマーとしてバンドに参加することになった。

SNSを通じて知り合ったので現段階ではまだ顔も合わせていない。

メッセージをやりとりしあって、とりあえず今月なかばに初顔合わせしてスタジオに入り音を合わせることになった。

このセッションしだいでその後バンドとして一緒にやってくかどうか本格的に決まるのでまだ何ともいえない状況だが、

プロ志向というわけでもないしオッサンの道楽みたいなものなのでリラックスして楽しめればと思っている。

考えてみれば今までも何度かバンドを組んでは空中分解を繰り返してきた。

自然消滅パターンが圧倒的に多い。練習のスケジュール連絡とかがしだいに途絶え始め、なんとなーく音信不通になってしまう。

これが昔からの友人同士で組んだバンドなら、音楽以外の部分で「最近どうしてる?」みたいな連絡もあるのだろうが、

純粋に音楽目的で知り合った間柄だと、バンド以外の接点がほぼ皆無に等しい。住んでる地域もバラバラで練習のとき集まるだけ、ふだんは何も交流がないというのがこれまで自分が体験したパターンだった。

まあおたがい社会人で忙しいってのもあるし、そんなに固〜い結束でもないので連絡が途絶えたら途絶えたでそのまんま。

もしかしたら直接は言わないものの何か不満があったかもしれない。テクニックの面とか人格の面とか。

オレ、知らず知らずに他のメンバーの足を引っ張ってたのかなーと思わず我が身を振り返ってしまう。

バンド演奏を楽しむにはメンバーに迷惑かけちゃいけないし、それには曲を完ぺきにマスターすることが一番だ。

天才プレイヤーでもない自分は、ひたすら練習に練習を重ねるしかない。

と言いつつ、自分そんなに練習好きじゃなかったりするんですよねー。

ギターやベースプレイヤーは自宅で練習することも可能だがドラムとなるとむずかしい。家にドラムセットがあり、気兼ねなく大きな音で叩きまくれる環境にあるアマチュアはそう多くないのではないか。

しかし仕事の合間をぬって練習スタジオを予約するのも大変ちゃ大変だし、金銭的かつ時間的な問題で思う存分トレーニングもできない。

でついに今回、ドラム歴ウン十年(そのほとんどはブランク)にして、ついに電子ドラムというやつを購入することにした。

以前習っていたドラムの先生には「電ドラ買うより本物で練習したほうがいいよ」と言われたこともあり、それなりに場所もとるのでずっと購入を迷っていた。

だいたい自宅にあれば練習するかというとそういうものでもない。スタジオに入ってやっと気持ちがドラマーモードになるというのもあるので、家に電ドラ置いてもホコリまみれの粗大ゴミとなりそうな懸念があったのだ。

その不安を乗り越え、今回ついに購入を決めた。中古で税込3万ほどのやつ。値段はピンキリあるし中古はコンディションも気になるところだが、今まで2、3回叩いてみたかぎりではそれほど問題はなさそうだ。

あとは自分がどれだけやる気になるかですねー。

半月先に迫った初セッションに向けて練習を重ねよう!

 

2月のスピード。

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うすうす予想はしていたが、お正月を過ぎたらブログの更新はぱったりと止まり、久しぶりに書いてみようかと思ったらもう2月もなかば。

毎年感じることだが、いつも年が明けて最初のひと月は長く感じられる。

それが2月、3月としだいに時間の流れが加速し始める。

すっかり平常ペースで仕事がまわりはじめてしまうともう駄目で、ささやかな身のまわりの出来事にほとんど神経が行き届かなくなる。とくに2月って他の月より日数少ないし。今年はうるう年で1日多いけどね。

うかうかしてるうちに春夏秋が過ぎて気がつけば「今年も終わりじゃねーか」と愕然としてるのが毎年のことだ。

今年こそはその時間の流れにどうにか抗いたい。これも毎年思うことだけど。

とくに今年で自分はとうとう大台にのってしまうのだが、我にかえってみれば50代最後の1年ももう半分切っているではないか。これには驚愕ですよ。

まあ今年は元旦から能登地震とか大きなニュースが連続して、正月気分から引き戻されるのがいつもより早かったよね。

とにかく2月は早い。まあこれがふだんの日常のスピードなんだろうなあ。

大台を越えるための心の準備をそろそろ固めないととは思うのだが、あいかわらず現状を維持するだけの大差ない毎日を送っている。

仕事は3年目に入り、少しずつ余裕をもってこなせるようになってきた。はじめのころはなかなかスムーズに進められず勤務時間が1日14時間以上だった時期もあったけど。仕事に追われる感は気分的にもだいぶ少なくなった。

この三連休も茨城県の日立や静岡県御殿場まで行っては車を引き取り、運転して戻る毎日だった。御殿場の帰り、仕事の関係で熱海から湯河原、小田原と海沿いへ抜けた。行楽の渋滞に巻き込まれたけど真っ青な海を見ることができた(写真)。

長距離の仕事は大変そうに感じられるが時間に余裕させあればそこそこドライブ気分を楽しめる。かえって近場だと何件も組まされて1日じゅう慌ただしく追いまくられる。

ここ数日、遠くへ行く仕事が続いたので多少気持ちにゆとりを取り戻せたようだ。

世間では休みが終わりこれから仕事のようですが、逆にこちらはこれから休みでゆっくりさせていただきます。

まあ特にこれといったこともできないだろうなー。

 

 

「頭文字D」のカフェ。

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車の仕事をしてるわりには、車についての自分の知識は驚くほど貧弱だ。

エンジンの構造とか車整備の専門的な知識はもちろん、どの車種のSPECはどうだとか、アルミホイールやパーツがどうのこうのとかいうのもまるで詳しくない。

運転が好きなのは確かなのでいまの仕事も続いているわけだけど。

職場の諸先輩や同僚はやっぱりクルマ好きな人が多く、仕事の合間の雑談でもあの車はどーだのこの車はどーだのと、僕にとってはマニアックな話題で盛り上がっている。自分はまったく話についていけず、いつも情けない思いをしている。

少し車に関する知識を仕入れないとなー。

先日群馬県渋川へ車の引き取りに行った。

このへんまで来ると関東平野もどん詰まりでそろそろ山あいが迫ってくる。渋川伊香保草津、四万など有名な温泉地も多い。

高崎で列車を乗り換えさらに数駅。車内にはいかにも旅行へ行く雰囲気のお客もちらほらいて、こっちも半分遊び気分になってしまう。

渋川駅を降りバスに乗ると遠くに赤城山。数日前の雪で山肌がうっすらと白い。路面の雪も多少心配だったが道ばたに少し残っている程度だ。

お客から車を引き取り、帰りの経路をナビで検討。まっすぐ渋川伊香保インターから関越に乗れば早いのだが、せっかく観光地まで来たので少しドライブを楽しみたい。下道で高崎まで行くことにした。空も晴天だし気持ちのよい走りになりそうだ。

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ナビを見ていたらそれほど離れていない場所にに「レーシングカフェ・D'z GARAGE」というお店を発見した。

店の説明を見るとマンガ「頭文字D」の世界観をテーマに作られたカフェらしい。

車にうとい自分でも「頭文字D」ぐらいは知っている。主人公が実家の豆腐屋の車で峠を攻めまくる物語で、走り屋たちのあいだではバイブルとなっている。自分も原作こそ読んでないが図書館にOVAがあったので借りて観た。

知らなかったが、この渋川周辺の峠道が原作の舞台となっているらしい。

ネットに出てきたD’z GARAGEの店内写真を見るといたるところに車関係のパーツが展示され、まさにガレージ感覚だ。

この店に入れば少しは車にくわしくなれるのではないかと思い行ってみることにした。

 

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これがお店の外観。もう午後遅い時刻だったので

逆光でいー感じの写真になってます。

パーキングスペースにはいかにも走り屋好みのカスタムカーが何台か並んでいる。自分のようにあまりクルマに熱心でないシロートさんには少しハードルの高さを覚える。

ビクビクしながら中に入ってアイスコーヒーを注文すると、スタッフのおにーさんは意外に気さくな感じでホッと安心した。

カウンターに座ると目の前にはクラシックなバイク(ホンダのCBナナハン?)などがさりげなく展示され、オシャレなカーショップの雰囲気満点だ。カウンターは普通のスツールだが、テーブル席の椅子はみんなレース車用のバゲットシート。徹底したこだわりだ。

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さらにお子さん連れの客へのサービスなのかオーナーさんの趣味なのか、フロアをたくさんのフィギュアが埋め尽くしている。これならおとーさんがクルマ談義に夢中になってても子どもは飽きないで遊んでいられそうだ。

頭文字D」がテーマのお店なのでもちろんTシャツやトレーナー、キーホルダーなどのキャラクター商品も販売されていて、充実した品揃えだ。

仕事の途中なのでゆっくりできなかったが近くにスカイランドパークというレジャー施設もあるようなので、もう少し暖かい季節になったらプライベートで来てみよう。

 

 

都会に隠棲する賢者の物語。〜映画「パーフェクト・デイズ」

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 facebookの映画グループへの投稿の転載です。

 本年初の劇場鑑賞はこの作品を選びました。
 平日夜の回に行ったら客席にはなんと自分一人だけ。おかげで上映中誰にも遠慮せずにスマホのライトつけておおっぴらにメモをとることができました。

 役所広司演じる公衆トイレ清掃員の毎日を描いたストーリーです。

 初老で東京下町のアパートで独り寝起きする主人公平山(役所)。さぞわびしい暮らしかと思ったら、動作のひとつひとつがきびきびとしてて朝から仕事に燃えてる感いっぱいです。 なにげない日常をたんたんと描く系の作品と聞いていたので、退屈なやつかなーと懸念しながら観始めましたが、編集もテンポよくスピーディーで飽きさせません。

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 いやー、それにしても都内にはいろんな公衆トイレがあるもんだ。

 主人公の洗練されたムダのない仕事ぶりはプロそのもの。長い修練、豊富な経験でとぎすまされています。横顔は矜持に満ち、ときに柔和な笑みもよぎるがその眼光は鋭さも秘めています。

 トイレ清掃は基本ひとりでの作業。柄本時生とのエピソードをのぞき、映画には職場の人間関係はほとんど出てきません。こういう仕事は人と接するわずらわしさがない反面、誰の助けも借りられず責任はすべて自分にかかってきます。それも主人公の真摯な職務ぶりにつながるのでしょう。

「仕事は楽しそうにやってると本当に楽しくなるんだ」みたいな言葉を聞いたことがありますが、たしかにダラダラやってるとよけいしんどくなるのかも。

 ま、渋谷の公衆トイレPRが映画の裏テーマでもあるので、きちんと働いてるところを見せるのは当然ちゃ当然でしょう。どんな職場だって現実に取材でカメラが入るとなれば、いつもよりマジメにやりますよねw

 ひとつ気になったのは主人公の所作があまりにも凛としすぎてたとこかなー。部屋にひとりでいるときとかはもう少し力が抜けてるものではないかと若干の違和感がありました。おそらくこれは意図的な演技プランだと思いますが。主人公をけして打ちひしがれたみじめな人間には描きたくなかったのでしょう。

 余計な口は一切きかない平山の寡黙さは、ネット上に空しい言葉があふれる現代への批判でしょうか。
 何気ない日の光や影、物言わぬ植物の息づかいに喜びを見出し、文学や音楽、写真を楽しむ、自分なりの満たされたライフスタイル。半世紀近く前のラジカセでカセットを聞いたり町の写真屋さんに現像を頼んだりは現実にはむずかしいでしょうが。

 淡々と日々の日課をこなし、ささやかなことを幸福とする平山の姿勢からは村上春樹作品の登場人物を連想します。まさに都会に隠棲する賢者の物語。

 東京のなにげない風景も魅力的です。早朝の場面が多く通行人も車も少なめ、すがすがしい空気感がスクリーンに満ちています。

 ほかに誰もいない劇場でたっぷりと作品に向かいあうことができ、新年早々幸福な映画体験でありました。

映画で体験、ビリー・ザ・ライブ!

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アメリカが生んだミスター・ピアノマンビリー・ジョエルが、1/24に東京ドームで一夜かぎりのコンサートをおこなう。

うーん、行くべきかパスするか…

彼のライブは前回2006年の来日のとき観ているし、セットリストだって今回それほど変わりはないだろう。行かなくてもいいかなーなんて考える。

だけどビリーもお年を召しているので今回が最後の訪日となるかもしれない。ならばしっかりと見届けたい…

などとマゴマゴしているうちに、チケットはあっという間に完売。

がっかりしていた昨年12月、ビリーの2008年シェイ・スタジアムでのライブを記録したドキュメント・フィルムが上映されると聞いた。

来日公演と同じく1日かぎりの公開だ。チケットとれなかったかわりにこっちを観るかと柏のシネコンに足を運んだ。

満員の観衆で埋め尽くされたスタジアムの空撮から映画は始まる。場所はビリーの本拠地でもあるニューヨーク。そのせいかステージ上の彼もリラックスした表情だ。

そしてなによりもオーディエンスが熱い。

日本ではビリー・ジョエルというと「素顔のままで」や「ストレンジャー」がヒットした70年代後半から80年代が人気のピーク、もはや過去の人みたいな扱いだ。

ファン層も当時若者だった人たちが中心で、みなさんいい年なのでコンサートで羽目をはずしたりなんかしない。ビリーにかぎらず超ベテランアーティストの公演はみんなそんな感じだけど。

しかし本場のライブではお客は老若男女ほぼ全世代にわたる。地元NYっ子にすればビリーは今も現役バリバリのヒーローなのだ。みんなノリノリでステージを応援している。

日本だとネクタイ締めたサラリーマン風が腕組みしながら直立不動で見てたりして。なんだかこっちも冷めちゃうんだよなあw

そして今回スクリーンに流れる歌詞の対訳を見て「ああ、こんな内容の歌だったのか」と目からウロコが何度も落ちまくった。

ふだん洋楽を聴くときは歌詞なんかほとんど注意してない。

ブックレットの対訳も見ないし、サウンドさえよければ意味は分からなくてもオッケーみたいに個人的には考えていた。

いやいや大きな間違いでした。「夏、ハイランドフォールズにて」なんて、タイトルとさわやかな曲調でてっきりバカンスの歌だと長年思ってたが中身はけっこうメンヘラ的。

「アレンタウン」の「暮らしはますます困難になっていく」といった詞は、若いころはそれほど感じなかったけど、今聴くとまるで郊外暮らしの自分の姿そのもので身につまされます。

ほんと、ビリーにかぎらず今まで洋楽の詞をないがしろにしてたのは大きな損失でした。曲の半分も理解してなかったと深く反省しました。

映画を観て、今回のコンサート、やっぱりチケットとるべきだったと後悔がさらに深まりましたが、なんと追加席が発売されたという一報が。

うーん、どうしよう…と悩む間もなく、またもソールドアウト。昨年度急逝したKAN氏がリスペクトしていたのでビリーの人気もさらに急上昇したようです。